菜楽の自然薯 −その味へのこだわり−


菜楽の自然薯は、20年近い歳月をかけて野生の自然薯から選抜した完全なオリジナル品種で、次のような特長があります。

  1. 枝分かれや極端な蛇行がないので、調理しやすい。
  2. 粘りが強く、芋が乾いても変質しにくい。
  3. 香りが良い。泥臭さや嫌な臭いがない。
  4. 粘り・香り・甘味のバランスが良い。
  5. 肉質がやわらかいので調理しやすく、歯ざわりが良い。
    (肉質の硬さと粘りの強さは無関係です。)
  6. 蒸しても美味しく食べられる。
  7. 上記の品質が安定し、当たり外れがない。

 以下は、自然薯全般に関する若干の説明と、現在の品種を選定するに至った経緯です。

自然薯の味はピンからキリまで

 一口に“自然薯”と言っても、その品質はピンからキリまで様々なものがあります。

 中には長芋の仲間に自然薯の名を冠して売っている怪しげなものもありますが、それらを除いても、やはりピンキリなのです。(具体的にどんなものがあるかは、後述)

 なぜそんなにばらつきが大きいのでしょうか?栽培環境の違い?確かにそれもあります。しかし、自然の状態では、もともと1つの種の中に様々な性質を持つ個体が混在しているのです。人間の個性が一人一人違うように、天然の自然薯にも一つ一つ味や形に個性があるのです。

 そんなわけで、商品として安定した品質の自然薯を生産するためには、優良な性質の個体を選抜し、品種として維持・繁殖する必要があるのです。その中で、自然薯の味を重視するか、経済性(作りやすさ、形良く大きく育つか、など。)を重視するか。どちらを選ぶかは自然薯栽培の大きな分かれ道だと思います。菜楽では徹底して味を重視してきました。


菜楽での自然薯栽培の始まり

 もう20年以上前の話になりますが、うちの親父が山から大量に自然薯を掘ってきました。その数100本以上だったとか。私(管理人)はその頃まだ子供でしたが、一緒に山に行ったのをおぼろげながら憶えています。

 掘ったのはいいけど、掘った芋をどうするか? 明確な目的があって掘ったわけではなかったらしく、処理に困ったそうです。その時たまたま自然薯の栽培法を教えてくれるという広告を見かけ、早速教えてもらいに行ったのが、菜楽の自然薯栽培の始まりでした。縁があったんですね。

 こうしてたまたま自然薯の栽培が始まったわけですが、後で考えると、この始まり方が実はその後に好影響を与えたようにも思います。

 1つには最初に導入した個体数の多さ。野生の自然薯100本なんて、なかなか掘れませんよね。当時は養蚕が主な仕事だったので、冬は暇があったのです。最初に導入した個体数が多ければ多いほど、その後選抜する際の選択の幅が広がるわけですから、より優良な性質の個体を得られる可能性が高くなるわけです。

 もう1つは、最初から収入を期待して自然薯を作っていたわけではないこと。当面の収益を重視しないので、試行錯誤しながらじっくり時間をかけて選抜していくことができたのです。


味へのこだわり

 自然薯の栽培を始めた当初は、実に様々なものがありました。葉の形や芋の形はもちろん、芋の味、肥大率、蔓の色、根の生え方に至るまで、それぞれに特徴がありました。

 その中から現在の品種を選ぶ過程で、いかに自然薯の味と向き合い、こだわってきたか。その一点をご理解いただければ幸甚です。


とことん味にこだわる理由

 自然薯は長芋と比べると高価です。それでも買っていただけるのは、やはり“美味しいから”でしょう。

 つまり、“美味しさ”こそが、自然薯の商品としての“価値”であると言えます。

 だからこそ菜楽では、自然薯の味にこだわり続け、作りにくくても美味しい品種を選んできました。


芋の形と味について

 自然薯には、「細長くて、くねくね曲がっている」というイメージがあると思います。実際、長芋と比べると細長いですし、くねくね蛇行するものもあります。

 しかし、同じ自然薯の中では、細くて曲がっている芋ほど美味しいというわけではありません。むしろ極端な蛇行、枝分かれなどの奇形は、調理しにくいだけでなく、アクが出やすいというデメリットもあります。

 ですから菜楽では奇形性の強いものは避けた上で、後は味を第一に考えて品種選抜してきました。


粘りについて

 “自然薯=粘りが強い”というイメージがあるほど、粘りの強さは重要な要素です。いちょう芋や大和芋と比べれば、どんな自然薯でも粘りが強いのは当然です。

 しかし、同じ自然薯の中で比べると、粘りが強い品種と弱い品種があります。本当に粘りが強い品種は、噛んでも唾液となかなか混ざらず、飲み込むのが大変なほどです。

 このような自然薯の粘りには、“コシの強さ”や“弾力”があります。だし汁等で薄めても長芋類の粘りとは明らかに異なり、質的な違いがあります。

 また、自然薯は乾燥に弱く、芋が乾いてくると粘りが弱くなる傾向があります。そして、この傾向にも、品種によって強弱があるのです。以前栽培していたもので、掘りたては美味しいのですが、乾くと粘りが弱くなる傾向の強い品種がありました。大きく育つ作りやすい品種だったのですが、結局は栽培を止めてしまいました。

 今作っている品種は、乾燥しても粘りが弱くなりにくい品種です。


香りについて

 自然薯といえば粘りに気をとられがちですが、香りも非常に重要な要素です。いくら粘りが強くても、香りが良くなかったら美味しいとは言えませんよね。

 ただ、香りは粘りと違い写真等を通して人に伝えることが難しいので、実際に食べたことのある人だけにしか分かりません。その辺りが、自然薯の香りについて言及されることが少ない原因の1つでしょうか。

 この香りにも、品種によって微妙な違いがあります。中には、明らかに香りが違うものもあります。具体的には、綺麗に洗っても泥臭いものや、何故かキノコのような匂いがしたものもありました。

 菜楽では、粘りが強くても香りが悪いものは淘汰してきました。


甘味・その他の味について

 自然薯にも甘味があります。甘味の強いもの、弱いものがあります。また、全体的に、芋が乾燥すると甘味が強くなります。

 ある程度甘味があった方が、味に厚み・深みが出るとは思います。しかし、甘ければ甘いほど良い、とは思いません。

 結局はバランスだと思います。香りやうまみ、粘り、他の味とのバランス。食べた時に「うまい!」と感じられるかどうかを第一に考えて選びました。


歯ざわり・肉質について

 とろろにしてしまえばそれほど関係ないのですが、芋の肉質も品種によって違いがあります。ここで言う“肉質”とは、芋を包丁で切ったときなどに「硬い」と感じるか「柔らかい」と感じるかです。

 肉質が重要になるのは、調理するときと、すりおろさずにスライスしてそのまま食べるときです。調理するときは、肉質が柔らかい方が、包丁で切るにもすりおろすにも力が要らないので楽です。

 スライスして食べる時は、肉質によって食感が変わってきます。好みにもよるでしょうが、菜楽の自然薯は肉質が柔らかいのでサクサクとした軽い歯ざわりで美味です。

 ちなみに、肉質の硬さと粘りの強さは無関係のようです。


とろろ以外の調理方法との相性

 「自然薯をたくさん買ったけど食べきれない。」、「すりおろすとアクが出てしまう。」、「すりおろすのが面倒。」という場合には、皮ごとスライスして鰹節と醤油をかけるだけでも、サクサクとした軽い歯ざわりと自然薯の香りが美味です。ありのままの自然薯の味を味わって下さい。

 それでも食べきれない場合は、蒸して食べることをお勧めします。サツマイモじゃないんだから…と思われるかもしれませんが、自然薯は蒸して食べてもホクホクして美味しいし、アクが気になりません。(ただし、蒸すことにより、アミラーゼその他の酵素は壊れてしまいます。)

 蒸すと美味しくない品種もありましたが、現在生産しているのは蒸しても美味しい品種です。


品質の安定性

 再三になりますが、山に自生している自然薯の品質は様々です。美味しいものもあれば、そうでないものもあるでしょう。同様に、栽培しているものでも、品種によって味は様々です。

 菜楽ではかつて複数の品種を生産・販売していましたが、現在販売しているのは1品種だけです。つまり、100本以上の天然の自然薯の中から試行錯誤しながら特に品質の優れた1本を選び、その1本を数百本に殖やして販売しているわけです。

 年月はかかりましたが、それだけ品質は安定しています。



 さて、これまで良いことばかり書いてきたので、「本当にそんな都合の良い品種があるの?」と思われるかもしれません。

 しかし、ここで書いてきたことは全て事実です。かような優良な品種にめぐり合えたことは、幸運だったと思います。

 これに満足せず、今後より良い品種が見つかった時には積極的に取り入れていきたいと思います。

 

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