レタスの育苗(苗作り)
農業には、“苗半作”という言葉があります。これは、苗の段階で出来・不出来の半分が決まってしまうほど苗作りが重要であるということです。
しかし苗作りには手間暇がかかりますし、畑での栽培とはまた違ったノウハウが必要になるため、他所で作った苗を買って植え付ける農家もあるとは思います。
そんな中、菜楽では苗にもこだわり、種から育てるレタス栽培を実践しています。
播種床の準備
菜楽ではペーパーポット(2.6cm ×2.6cmが220穴)でレタスを育苗しています。ペーパーポットを写真のように稲の育苗箱にセットし、中に育苗培土を詰めて種を播きます(ペーパーポットは濡らすと個々のポットに分かれるのですが、乾いた状態だと写真のように繋がっています)。
育苗培土は、濃縮培土という便利なものが市販されているので、これをベースに自分で作ります。基本的には濃縮培土に3倍量(容積)の山土を混ぜて作るのですが、菜楽ではこれに微生物資材を加えています。最初の頃は濃縮培土と山土だけ混ぜたものを使っていたのですが、暑くなったとたんに苗立枯病が発生して次々に苗が枯れ、仰天したことがありました。原因は、土にリゾクトニア菌(病原菌の一種)が混入し、気温が高くなったとたん、爆発的に繁殖したためのようです。一般的には臭化メチルというガス(オゾン層を破壊するため問題化し、使用禁止になる予定)を使って土を殺菌することが多いのですが、菜楽では、有益な微生物を以って病原菌を抑える方法を選びました。この方法だと費用も安く、扱いも楽なので、ものぐさにはぴったり。
播種(種まき)
レタスの種はとても小さく、息を吹きかけただけで飛んでしまいます。これでは非常に扱いにくいので、1つ1つの種の周囲を特殊な素材でコーティングしたもの(コート種子)を 使います。(レタスの種は小さくて細長いのですが、コーティングして球状にしてあるのでコロコロと良く転がります)
このコート種子を、写真右側のような器具に入れ、全体に満遍なく良く転がしてあげます。そうすると、 器具の穴の中に1穴1個ずつ種がはまります。全部の穴に種が入ったところで上の板と下の板をずらすと、下の穴からレタスの種が下に落ちて行きます。(下はイメージアニメーション)
種をまき終わったら、水遣りをします。ただ、ジョウロ等で上から水をかけると種や土が流れてしまうので、水槽に水を張り、そこに育苗箱ごと浸して下から水を吸い上げさせます。吸水させたら温床線の上に並べ、防乾と保温のために紙で覆い、約20℃に保ちます。約2日で発芽するので、覆いを取り除き光を当てます。
種まきは収穫時期を考えて、時期をずらしながら継続して行います。春は2月から5月まで5〜2日おきに約1300個ずつ、秋は7月から1回に1300−2000個くらいずつ播きます(春は徐々に気温が上がるため後に播いた方が生育が早く、先に播いたものに追いつくので間隔を空けて、秋は徐々に気温が下がって先に播いたものの方が生育が早く、差が開いてくるので間隔を詰めて播きます。その他出荷数量等も考慮しながら播き方を変えていきます)。
育苗管理
5月出荷用レタスの種を播き始めるのは2月。栃木ではまだまだ寒い時期です。レタスは発芽適温も生育適温も約20℃なので、保温しなければいけません。育苗箱の下には温床線が張ってあり、サーモスタットを付けて温度管理をしています。また、写真のように針金等でアーチを並べて作り、その上からビニール等で覆いをして(これを“トンネル”と言います)熱が逃げないようにします。朝夕外は零下になることもありますが、トンネルの中は20℃に保ちます。これらの施設はハウスの中に作るので、ハウスの開け閉めとトンネルの開け閉めで温度を調整します。
種を播いてから2日もすると、コート種子が割れて、中から白い根が出てきます。コートには、根が地中に潜るときに体が持ち上がってしまわないように、重りの役目もあるようです。葉が展開してくるのは、しっかりと地面に根を張ってからです。
発芽から定植まで、当分の間20℃で管理します。種を播いてからずっと同じ施設内で管理できるので効率は良いです。とは言っても、日中の天候によっては換気も必要なので、ハウスを開けたり閉めたりと気が抜けません。うっかりすると焼けてしまうこともあるからです。
コートが割れ、中から根が出てきたところ。
葉が開き始めたところ(左)と完全に展葉したところ(右)
育苗管理中の苗。奥に行くほど幼苗。
ハウスで育てた苗をそのまま露地に植えつけると植え傷みを起こしやすいので、定植3日前くらいから昼間は外に出すなどして外気に慣らしていきます。この過程を“順化”といいます。
最初の播種は2月10日頃で、この時期に播いたものは約1か月で定植苗(本葉4枚くらい)になります。
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